第45回東北環境設備研究会
−健康で快適な室内空気環境の実現に向けて−
近年、化学物質による室内空気汚染、いわゆる“シックハウス問題”が注目されており、
これに関連して、昨年7月に建築基準法が改正されました。この中で規定されているように、
シックハウス問題を解決するためには、適切な換気と使用建材の選定が重要です。
しかし、現在、室内における汚染物質の発生源と発生量に関するデータが非常に不足しており、
これらを明らかにする必要があります。また、在室者の健康や快適性については、化学物質に
よる室内空気汚染だけでなく、湿度環境の影響も無視できないと言われており、近年、これに
関する研究が内外で注目されております。
本講演会では、最近、博士論文を完成させた新進気鋭のお二人の研究者をお招きし、化学
物質による室内空気汚染、湿度環境の居住者への影響に関する研究成果をお話頂く予定です
最新の研究動向を知る絶好の機会ですので、奮ってご参加くださいますようお願いします。
主催:(社)日本建築学会東北支部環境工学部会、(社)空気調和・衛生工学会東北支部、
住まいと環境東北フォーラム、(社)建築設備技術者協会東北支部、
日時:平成16年10月21日(木)14時から17時20分
場所:フォレスト仙台 第3・第4会議室
仙台市青葉区柏木1-2-45 TEL
022-271-9340
<プログラム>
司会 持田 灯(日本建築学会東北支部環境工学部会長 東北大学)
1) 開会挨拶及び講演者の紹介 吉野 博(東北大学)14:00-14:10
2)低湿度環境が在室者の快適性・知的生産性に与える影響 14:10-15:40
講師 堤 仁美 (早稲田大学 理工学総合研究センター)
<
休憩> 15:40-15:50
3)小型チャンバー法を用いた建築材料からの化学物質放散測定 15:50-17:20
講師 舟木 理香((財)建材試験センター)
閉会挨拶 山田 則行(空気調和・衛生工学会東北支部長 新菱冷熱工業鞄喧k支社)
定 員 60名
参加費 無料
申し込み:はがき、FAX、Eメールのいずれかで、「第44回東北環境設備研究会参加申込み」
と明記し、氏名、所属、住所、連絡先の電話番号とFAX番号などを併記のうえ、次の
空気調和・衛生工学会東北支部事務局代行機関までお申し込み下さい。
〒980-0821 仙台市青葉区春日町3-8 春日町ファインビル4階
住まいと環境・東北フォーラム内
電話:022-221-9042、FAX:022-221-9243、E-mail:htoenv@rio.odn.ne.jp
<講演要旨>
低湿度環境が在室者の快適性・知的生産性に与える影響
講師 堤 仁美(早稲田大学
理工学総合研究センター)
現在、日本ではビル管理法、欧米ではASHRAE基準によってオフィスの湿度基準
が定められている。しかし、これらの湿度の下限値は、冬季の低湿度気候を想定して
設定されており、夏季における低湿度基準の科学的根拠はないのが現状である。一方、
空調設備システムの技術向上により、氷蓄熱を用いた低温送風空調等、夏季の低湿度
を実現可能な空調システムが実用化されている。また、中間季の外気冷房によっても
室内湿度が低下する可能性がある。この他、建築内部空間では、建築物の高気密化
、新建材の使用により、室内空気汚染問題が生じている。空気汚染化学物質は、粘膜
刺激を生じ、在室者がこれを湿度による乾燥感と認識する可能性がある。加えて、在室
者自身のコンタクトレンズ装用による目の乾燥感やドライアイ症候群等の問題もある。
このようなオフィス内空間の現状をふまえ、夏季・中間季における低湿度環境が在室者
の快適性・知的生産性に及ぼす影響を評価・検討することを目的とした研究を日本及び
デンマークで行った。また、低湿度であると指摘されながらも実測例の少ない航空機内
環境測定を行い、飛行中に乗客・乗務員がどのような環境に曝露されているかを把握した。
本講演では、これらの研究事例を既往の研究と併せて紹介する。
小型チャンバー法を用いた建築材料からの化学物質放散測定
講師 舟木 理香((財)建材試験センター)
室内におけるホルムアルデヒドやトルエンなどによる空気汚染が大きな社会問題となり、
シックハウス症候群、化学物質過敏症といった健康障害が問題視されている。シックハウス
対策としては、換気を行うとともに、建材・施工材からの化学物質放散特性を把握し、低放散
建築材料を用いることが基本となる。本研究では、建築材料などからの放散物質を定量的に
把握できる小型チャンバー法を用いて、種々の建築材料からの化学物質放散量を測定し定量
的なデータを収集した。初期放散が高いものでも1週間程度で減衰しほぼ定常に達することを
確認したことから、施工後1週間程度の放散期間を設けることで室内濃度の上昇を軽減できる
と考えられた。また、建築材料のみではなく、室内で放散源となり得る生活用品など様々な材料
や製品に関して、化学物質放散量を定量的に把握し、対策することが重要であることがわかった。