東北建築賞ギャラリー
第37回東北建築賞(作品賞4作品)
作品賞 受賞作品
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路地にかかる大軒
本作品は、仙台市青葉区の市街住宅地の西南角地に立地する、夫婦および子供 2 人のた めの戸建住宅です。設計者がかつて近隣に居住していた経緯を踏まえての発注で、現代で は失われつつあるご近所付き合いが残る地区であることを発注者家族と設計者が認識共有 していることが、本作品の基礎のひとつとなっています。 南北にリビングダイニングと書斎寝室を配した明解な平面構成です。中央部 1 階のキッ チンとエントランスギャラリーそして西側の大きな軒下外部空間とを直線的に連続させ、 近隣との関係性を構築しています。またこれらとリビングダイニング・子供室は空間的に 一体に接続しながらも、スキップフロアーにより区別とプライバシーの確保がなされてい ます。これらを緩勾配の方形屋根が覆い、大きな一室空間としながらも、キッチンとリビ ングダイニングには床暖房を設備し快適な温熱環境を合理的に確保しています。 以上のように本作品は、近隣との関係性に配慮した丁寧な設計による高品質な住宅で、 東北建築賞作品賞に相応しいものであると、結論付けられました
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西根の家
この住宅は、現代における雪国の農村集落における住宅のあり方をシンプルに体現して いることが評価されました。除雪の負担となっている長い引込み道(序口)を短くし、前 面道路と平行に建物を構えることで、伸びやかな屋根の姿が強調されています。外装には 杉板が貼られ、杉材の縁側も軒下の心地よい風景を作り出しています。前面道路からの視 界は、盛土によってほどよく遮断されていますが、垂木が表しになった室内からの空間的 な広がりは十分に確保されています。建具の納まりがディテールまでよく検討されている ことも評価されたポイントの 1 つです。加えて、この住宅にはペレットストーブや地元メ ーカーの木製サッシが採用されていますが、冬季の温熱環境やコスト、夏季の風の抜けや 開け放たれた窓辺の風景など、適切に考慮されていることも好感が持てました。ストーブ、 木製サッシ、散水消雪システムは、設計者が過去の数々の住宅設計でも試行錯誤しながら 採用してきた経緯もありますが、西根の家はその集大成のような位置付けであるようにも 感じました。
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弘前市民会館(大規模改修)
弘前市には前川國男のフランスからの帰国直後から最晩年に至るまでの多くの作品 が残されています。それぞれが市民により愛され現在でも大切に使われています。本作 品は 1964 年に竣工した前川國男設計による公会堂の、前川建築設計事務所による大規 模改修です。 50 年の歳月は、コンクリート打放し仕上げ躯体等の経年劣化のみならず、現代の建 築として備えるべき機能と性能の不足を招きました。改修にあたっては、強度とともに コンクリート打放しの表情を蘇らせる躯体補修、オリジナルの窓サッシを活かした開口 部改善、従来の音響を大きく変えないホール客席交換、ホール照明の LED 化と調光シス テム導入、違和感なく備えられた EV 新設、空調システムの現代化、屋上への PV パネル 設置の工夫、照明器具や家具類そして色彩の復元等々がなされ、原設計への敬意に満ち たきめ細やかな配慮が随所に見受けられます。 作品そのものの建築的価値に加え、このような大規模改修を実現させた発注者・弘前 市ならびに設計者の建築文化向上への貢献を評価し、東北建築賞作品賞に相応しいもの であると結論付けられました。
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矢吹町中町第一災害公営住宅
公営住宅の設計は整備基準の制約を受けがちですが、この住宅では町と連携しながら 数々の設計提案を実現に移しています。提案の 1 つである集成材厚板パネルは、バルコ ニー周りの構造提案であるとともに、リビングアクセスの住戸タイプにとって肝心な中 間領域の形成に効いています。通路側からみると軒下には個人領域が楽しげに溢れ出し、 住戸側にとっては長い軒が心地よく、その先の通路までのほどよい距離感を形成してい ます。住戸内に入ると、玄関からの奥行きが十分に感じられることに加え、その直交方 向にも空間的な広がりを感じる構成となっています。ちなみに、この住宅は震災後に町 が奥州街道沿いに計画した複数の公共施設の 1 つであり、町の南側の入り口に位置して います。その中で、他の施設とのデザイン的な調和や空間的なつながりも十分に考慮さ れており、街道を行く人びとの温かさに触れながら生活できる環境が生み出されていま す。この観点からも原発事故により他市町村から移転してきた方々にとっての住まいと して十分なものであると評価しました。
特別賞 受賞作品
特別賞受賞作品はありません。