東北建築賞ギャラリー
第30回東北建築賞(作品賞4作品)
※東北建築作品集vol.21の巻頭ページに下記の受賞作品がカラーで掲載されております。ご購入はこちらよりお申し込み下さい。
作品賞 受賞作品
桂木の家
作品は、積雪寒冷地に在りながら、大開口を有する吹き抜け空間を中心に構成され、室内空間の開放性や高い採熱・採光性能を創出している。大開口を有するが故に、冬期の温熱環境に不安を感じたが、蓄熱暖房器を床下に配することで、基礎コンクリートが蓄熱体として暖房効率を高め、ペアガラスや樹脂サッシなど、従来の工法や材料が十分に要求性能を満たすことで快適な住環境を構築している。各階の床材や水回りに用いられた青森ヒバの無垢材は、地産地消による産業振興やコストパフォーマンス、シックハウス対策に貢献している。また、ガルバリウム鋼板で構成された外観は、一般的に冷たい印象を与えるが、大開口から垣間見える内装の木目と暖色照明により、行灯のような優しい暖かさを与えてくれる。さらに、歩行者専用道路に隣接されたテラスは、近隣の児童や高齢者に気兼ねなく利用され、設計者の意図した「周辺地域への開き方」を体現する場となっている。 積雪寒冷地において、大面積の開口と快適な温熱環境を両立させ、地域社会に開かれた本作品は、暗く閉鎖的な印象を与える寒冷地住宅のイメージを払拭する新たな建築への試みとして高く評価できる。
いわき平競輪場
競輪場はギャンブル施設としての負のイメージを払拭することが極めて困難な建築物である。それが住宅地に近接して存在するというのであれば、必然的に周辺住民への充分な配慮、施設としての地域への融合性の確保という難題に直面することになる。いわき平競輪場はバックスタンドを地域開放型の施設として位置づけ、「サイクルハウス」と称する小集会施設を併設すること、トラックに囲まれる中央部分を市民広場として開放することなどで、地域との共生という困難な命題を克服した。施設そのものについても、アルミ管のルーバー使用による省エネルギー効果および視覚的効果の創出、三次元PCの利用によるバンクの実現、バンク下階の利用による車両収容スペースの確保など、様々な技術やアイデアが見られ、それらは充分に評価できる。技術の高さ、アイデアの斬新さ、地域との共生ができる新しい競輪場の現出という困難なコンセプトの実現、施設の完成度の高さは充分に受賞に値するものである。
大船渡市民文化会館・市立図書館/リアスホール
設計者らがファシリテーターとなり、企画段階から開館に至る各段階で市民参画のワークショップや市民グループによるイベントなどを頻繁に開催し、その過程で市民と対話し、施設運営を支援する市民ボランティアの育成・組織化も図った。その企画構想と実行力は大変に優れている。建築意匠面では、大船渡の景観要素であるリアス式海岸と穴通磯をデザインモチーフに取り入れ、施設全体の意匠を巧みにまとめている。建物外観は写真では奇抜な印象も受けたが、現地では違和感なく、市民には象徴的であり、地域外からの来館者には大船渡の地域イメージを記憶させるのに成功している。リアス式海岸をRCで表現した構造には若干アクロバティックな感もあるが、解析技術を駆使し、施工的な苦心・工夫の跡が見られ、設計者と施工者が協力して難解な建物を作り上げた技術が評価できる。 開館から1年間あまり非常に多くの来館者数と高い施設稼働率を実現し、地域で活用されている。企画・設計・ディテール・運営に至る迄つくり込まれた完成度の高い建築であり、作品賞に値する。
木立の中のリラクゼーションオフィス
「働く人たちの生活の場としてのアメニティ」を重視するというクライアントのコンセプトを実現させた作品。職住近接を理想に、周辺の山々を眺望できる郊外住宅地の一角に建つオフィス。将来は本社機能の移転も視野に計画されたという。 丘陵地の雑木林に囲まれた広大な敷地の中に、埋もれるように建つこのオフィスは、2階の低層に抑えられ、羨ましいような環境の中にある。外観のデザインは緑豊かなこの環境に、傾斜したガラスカーテンウォール、樹木のような柱、それに不整形なプランとブラウン系の色彩で応答している。内部はリラクゼーションスペースに多くの面積が配分され、短時間でリフレッシュできるよう計画されている。またブラウン系のグラデーションでまとめられたインテリアは音環境にも配慮され、落ち着いたホテルのような趣が印象的である。立地も含めて、今後のオフィスの在り方に指針を与える作品として評価された。
特別賞 受賞作品
特別賞受賞作品はありません。