東北建築賞ギャラリー
第33回東北建築賞(作品賞6作品)
作品賞 受賞作品
HOUSE-M
本住宅は実用的なエコハウスを志向した木造住宅で、山形市の中央部に位置し、畑等の空き地が散見される閑静な環境に囲まれています。山形県産の杉の横板張りの外装は、築後1年余りということもあり表面の色合いのばらつきはあるものの、周囲に溶け込んだものでした。外壁、屋根および基礎部分の断熱や開口部の仕様は、よく工夫され、実用住宅として考えうる最高の仕様となっています。このような高断熱仕様による室内環境は、アクティブな手法では得られないマイルドな快適性を提供するもので、住まい手の立場に立った空間構成と共に、住んでみたいと思わせる住宅となっています。太陽熱利用温水器、太陽光発電、薪ストーブなど無理のない範囲で再生可能エネルギーが利用されていることも評価したいと思います。実用住宅ではありますが、今後、エネルギー消費量や室内環境などについて、計測、公表されることを期待したいと思います。
特別賞 受賞作品
冬日の家(ふゆびのいえ)
この住宅は、地方都市の伝建地区の位置する住宅です。寒冷地では積雪などの理由から一般的に閉鎖的な住宅になりやすい中で、東西方向に3つの層を設定し、木製の可動間仕切りとサッシにより季節的にフレキシビリティーの高い生活空間が提案されています。特に南側に面する「使う庭」に接するサンルームとリビングは一体的な空間として計画され、冬季においても高度の低い日照を取り込んだ開放的な生活を可能にしています。また、ウォークインクローゼットを介してつながるリビングとこども部屋の機能性と回遊性、通り土間を介した客間では、庭に対して開口部を絞り視覚的なつながりと連続性を実現しています。また、無落雪を前提とした陸屋根と水平に広がる軒裏のデザイン。東北地方では珍しい焼き杉による外壁を用い、近隣の伝建地区の街並みとも関係を構築し調和を生み出しています。 多雪地域における単なる質の高い住宅の提案を越えて、通常、制約条件になりやすい雪と冬季の日照を巧みに取り込み、冬の日常的に開放的な風景を新たに生み出す設計者の手腕は、審査会においても高く評価されるともに今後の活躍が大いに期待されます。