東北建築賞ギャラリー
第46回東北建築賞(作品賞6作品、特別賞1作品)
作品賞 受賞作品

天童荘うなぎ勘治郎
この建物は,老舗旅館である天童荘のうなぎ料理を提供する店ですが,あえて天童荘の外の道を挟んで向かい側に作ることで,旅館とまちが一体となり開かれた空間を創出することが意図されています。この建物の両隣には,先に建設されたガーデンカフェと天童温泉の源泉櫓があります。建物としては源泉櫓をL字型に囲む形状で,大小二つの屋根が架けられたシンプルなつくりですが,屋根と外壁のラインをガーデンカフェと揃えることや外壁を源泉櫓の板張りと共通させること等により景観の一体感を作り出しています。また,2間幅の飲食スペースの両側は全面ガラス開口となっており,周囲の景観を切り取って眺める装置となっています。本作品の設計者は,無秩序な開発で天童らしさが失われた景観の改善を目指して,まちなかに複数ある源泉櫓のデザインコード統一,天童の里山特有の植物を寄せ植えしたユニットのまちなか展開なども推進しており,この場所を起点にまち全体の魅力向上へと繋げています。以上の点を踏まえ、東北建築賞作品賞に推薦されました。

滝観洞観光センター受付施設
JR釜石線上有住駅の麓にある「滝観洞」入洞受付施設です。入洞料の徴収やヘルメットの貸し出しなどの業務を行っていますが、単なる観光のための受付施設にとどまらず、現在閉鎖中の隣接する集会所の代替として、地域住民が日常的に訪れるコミュニティ施設となっています。急峻な崖地に細長くへばりつくような特徴的な配置計画で、従前から営業していた人気の「滝流しそば」がより楽しく体験できるよう、丁寧なレベル設定が為されています。既存擁壁を再利用しつつ、新設の擁壁と分厚いコンクリート底盤によって土圧を抑え、滑動に配慮した土木的な設計が行われている点がユニークです。町産木材によって構成された空間は、住宅のスケール感を保った柱割りやサッシの割付などと相俟って、あたたかみのある内外観をつくり出しています。土地のレベル差に沿うように奥に行くにしたがって高くなる勾配屋根は、駅のホームからもよく見え、山あいの景観に無理なく溶け込み,小規模ながらも様々な工夫と住民の想いが込められた秀作です。以上の点を踏まえ、東北建築賞作品賞に推薦されました。

大熊町大野駅西交流エリア CREVAおおくま・クマSUNテラス
東日本大震災および原発事故からの復興が進む大熊町において、町の玄関口であるJR大野駅前に整備された新たな生活・産業の拠点です。本施設は、オフィス機能を備えた「CREVAおおくま」と、商業施設「クマSUNテラス」から成り、地域の原風景を継承しつつ新たな賑わいを創出しています。「CREVAおおくま」は、コの字型の配置や中央の吹き抜け、テラスやコワーキングスペースといった豊かな共用スペースにより、利用者同士の交流を促す空間構成が秀逸です。県産材を活用した木鉄ハイブリッド構造による温かみのある大空間は、大手ゼネコンの施工技術に裏打ちされた極めて高い完成度を誇ります。木の質感を活かしたV字斜柱や集成材の梁が、意匠性と構造の力強さを両立させることに成功しています。地中熱利用等のゼロカーボンへの先進的な取り組みも、高い水準で建築に取り込まれています。以上の点を踏まえ、東北建築賞作品賞に推薦されました。

アグリカレッジ福島-アグリ探求棟・屋外作業準備棟・一般宿泊棟・学生寮-
福島県内唯一の農業短期大学校における、研修棟・一般宿泊棟・学生寮のプロジェクトです。異なる機能別の建物を、全体として一つの村のような景観となるよう高さやボリューム感を揃えて設計し、違和感のない一体的なスケールに落とし込んでいます。分棟型とすることによって生み出される様々な大きさの外部空間を渡り廊下がつなぎ、辻の部分で学生同士の自然な交流が図られるようデザインされています。学生達が最も長い時間を過ごす寮棟には、外部に面して広い土間が設けられ、コミュニケーションの場となるだけでなく、収穫物を並べるなど農家の縁側のような使われ方も意図されています。研修棟には、外部からフラットに農機具を入れてそのままプレゼンテーション用のステージとなるレベル差が設定されており、近隣の農家の方々に向けたイベントにも積極的に利用されています。予算的な制約が厳しい中、丁寧なプランニングと緻密なボリューム操作によって構成されています。以上の点を踏まえ、東北建築賞作品賞に推薦されました。

にしかわイノベーションハブ TRAS
みんなでつくる“つなぐ・つながる場所”をコンセプトに「出来事づくり」を目指した、町づくりの拠点となる複合施設です。3つの円弧を基準とした凹型三角形の平面構成とすることで三角の不整形敷地と融合しています。周辺環境と呼応した屋外空間は「動」と「静」にゾーニングされ、町の風景と調和しています。円弧のRC壁は、内部空間を緩やかに間仕切り、室内をほどよい距離感で繋ぎ、フレキシブルで利便性の高い空間構成としています。開放感のある開口部は、自然豊かな環境を内部に取込み、居心地のよい雰囲気を醸しています。雪対策を考慮した軒下空間は、屋外と室内を繋ぎ、様々なイベントに活用し、環境的役割を担う工夫もされています。町内産西山杉による木架構や、伝統工芸との連携など、地域との関わりによる取組みもありました。本プロジェクトではワークショップを幾度と開催し、より相応しい敷地に変更するなど、町民ファーストの施設づくりが実施されました。筆頭設計者の町に対する思いと、地域に根差した町づくりへの取組みも高く評価されました。以上の点を踏まえ、東北建築賞作品賞に推薦されました。

平川市新本庁舎
青森県津軽地方に位置する平川市に建替えの新本庁舎は、不定形な敷地の中央に正三角形状の平面形庁舎を巧みに配置することで東側に整形の駐車場を確保し、約2.5m段差のある北西側の広場とは緩やかな勾配を設けて全体をひとつながりとしています。周辺道路のどこからでもアクセスでき、交差点から連続する広場もまちの居場所づくりを生み出しています。地域の象徴となる岩木山や遠方の八甲田山の山々と呼応するように三角形状の各階全周に途切れなく連続する窓のデザインは、内部機能とも連動しながらのびやかに近景と遠景とを見事に一体化させた景観を生み出しています。三角形の特性から効率的な動線を生かすと共に、その二辺には奥行きのある執務空間を無柱でフレキシブルな矩形配置とし、もう一辺の北側から安定した自然採光を取り込む四層の吹抜け空間を介してすべての機能や動線を認識することができます。地域の風土から地下水の温度差を冷暖房エネルギーや融雪とする環境への配慮、免振構造の採用での災害拠点となる庁舎としています。以上の点を踏まえ、東北建築賞作品賞に推薦されました。
特別賞 受賞作品

黒石市役所わのまちセンター
青森県黒石市中町には藩政以来の町家と木造のアーケード「こみせ」からなる町なみが残されており、重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。本計画はそこからほど近い商業地域に建てられた、市役所の窓口機能と子育て支援、多世代交流機能を融合させた複合施設です。近隣では図書館も新設され、市役所本庁舎の建て替え計画もあります。本計画も、コンテクストを尊重しながら徒歩で楽しめる中心市街地を持続・再生させていく努力の一つとして高く評価され、特別賞の受賞となりました。本計画の魅力の一つは、不整形な敷地を使うにあたって要所に広場や中間領域を配置したことです。狭い間口で街路に接する部分にこみせ状の庇をつくり、そこから続く回廊で敷地中心に至ります。そこにひらけた広場「かぐじスクエア」は、重伝建地区にある街区内の余剰空間の伝統をなぞるものです。更に建物内にも二層吹き抜けの「あずまし広場」を設け、積雪の多い当地の冬に対応しています。これらの内外の空間が利用者の居場所となり、その交流を誘発することが期待できます。以上の点を踏まえ、東北建築賞作品賞に推薦されました。